量子化学研究協会
量子化学研究協会ウェブサイトへようこそ。この法人は、量子化学の研究とその普及に関する活動を行い その成果を国際的に公表することによって、 科学技術の発展と人類の幸福に寄与することを目的としています。
「凍結」に反対します
10月13日に行われた行政刷新会議の事業仕分け作業により、国家プロジェクトとして理化学研究所が中心になり進めている次世代スーパーコンピューター開発プロジェクトが、一時間に満たない議論と投票により"凍結"と結論されました。このプロジェクトは科学技術立国を目指す我が国の重要なプロジェクトの一つであり、我が国が科学技術立国を目指しそれによって世界の繁栄と福祉に貢献しようとする基本政策の是非の上に議論されるべき性格のものです。
行政刷新会議により「本格的着手の妥当性」としてまとめられている見解は、税金投入の見返りとしての効果と利益、世界一を目指す上でのプロジェクト推進の在り方に論点があり、これらは以下に述べるように、本開発プロジェクトにおいて常々議論され検討されてきたものです。私たちは、我が国が科学技術立国を目指しそれによって世界の繁栄と福祉に貢献しようとする基本政策に賛成し、そのうえに立つ次世代スーパーコンピューター開発プロジェクトの円滑な進行を強く求めます。またこのプロジェクトの「凍結」は、以下に述べる理由により、我が国の国益に大きく反するものでありますので、その見直しを強く求めます。
コンピューターは現代の科学技術にとって「空気」や「水」のように必要不可欠な環境をなしており、スーパーコンピューターはその頂点に立つもので、その国の科学と技術と情報に関する国力と産業力の象徴であり要であります。この産業力と国力に対する評価が我が国の文化的・経済的活動の源泉であり、我が国の輸出産業などをインテグラルに支えるものである事は明らかであります。この頂点の科学と技術の革新を推進することによって、その大きな分野全体が同時に発展し、我が国の経済と文化の発展をもたらし、世界の尊敬を勝ちうるのです。
また、スーパーコンピューターそのものも、不可能を可能にする力があり、これによってあらゆる科学・技術分野、地球的分野(温暖化・気象など)、生物と薬の分野、などなどが直接的なメリットを受け、それによって今まで不可能であった事が可能になり、我が国の文化と国民の生活に大きな直接的メリットをもたらします。
この事業は、世界一でなくてはなりません。世界の科学技術も経済も世界一にしか注目しません。この競争社会にあってどうして二流を買うでしょうか? また、我が国の多くの科学技術分野もこの世界一の道具によって初めて、世界の競争に打ち勝てます。この世界一の競争は、高い文化と知と技術を必要とし、常々そこでトップで走っていてのみ、次の競争に勝てるのです。「凍結」はそのような分野では致命傷です。
世界一でなければどうなるか?まず、我が国のコンピューターとその関連製品が売れなくなります。基本的な評価がないからです。次に、我が国が世界一のコンピューターを輸入するようになります。それがないと、世界の熾烈な競争に打ち勝つ事が出来ないからです。そのために、非常に高価な代金を支払わなくてはなりません。その状況は、スパコン開発技術を持たないヨーロッパ諸国が日米からのスパコン導入に多大の投資を余儀なくされている現状に明らかです。我が国がそのような状況になっていいのでしょうか?
次世代スーパーコンピュータープロジェクトは、政府と多くの専門家や一般委員の方々、また外部の多くの科学者や民間人の意見などを踏まえて進展してきたもので、しかも既に船はのり出していて、産業界や科学技術界はその成功を前提として動き出しています。従ってこれを凍結することの「波及効果」には空恐ろしいものがあります。
以上の理由から、私達は、政府に対して、本プロジェクトの重要性を再認識し、「凍結」を撤回し、より一層強力にプロジェクトの推進を図る事、を求めます。
特定非営利活動法人・量子化学研究協会
中辻 博(理事長・京都大学・名誉教授)
波田雅彦(副理事長・首都大学東京・教授)
江原正博(副理事長・分子科学研究所・教授)
中井浩巳(理事・早稲田大学・教授)
杉本 学(理事・熊本大学・准教授)
長谷川淳也(理事・京都大学・講師)
牛尾二郎(監事・日立製作所)
遠藤一央(東京理科大学・客員教授)
リントゥルオト正美(京都府立大学・准教授)
福田良一(分子科学研究所・助教)
本田 康(首都大学東京・助教)
豊田和男(大阪市立大学・講師)
宮原友夫(量子化学研究協会研究所)
中嶋浩之(量子化学研究協会研究所)
黒川悠索(量子化学研究協会研究所)
石川敦之(京都大学)
堀川武則(東京大学)
中尾武寿(松下電器産業)
中辻美恵子(量子化学研究協会)
伊藤祐富子(量子化学研究協会)
量子化学研究協会は科学研究費補助金の規定研究機関
(機関番号:94309)
研究の概要
我々は、量子化学の研究グループであり、
「新しい量子化学理論と化学概念の展開」
を最重要テーマとしています。その目的は、多くの化学現象の根底に潜む
普遍的な原理を明らかにすること、また、それに基づき新たな化学現象を
予言することです。
我々の夢を一言でいえば、
「自由な発想でオリジナリティーの高い理論を作ること」
であり、本法人を拠点とする研究者や会員が、密接にディスカッションしながら
研究を進めています。
理論は、実験とは異なり、作成できる試料の制限や実験装置の制約等に とらわれることなく、自由な発想で、多くの物質の様々な現象をそのエッセンスにおいて 取り扱うことができます。
このような立場から、我々は
- Schrödinger方程式やDirac-Coulomb方程式を正確に解くための一般的な理論
- 励起状態の化学を研究するための理論
- 生命現象の根底に潜む電子論
- 生体分子や結晶のような巨大な分子系を研究するための理論
- 触媒反応の謎を解明するための新しい概念
- 化学における相対論的効果の重要性を明らかにするための研究
さらに我々が開発した理論を実際の複雑な反応系に応用するため、効率の高い 計算アルゴリズムやソフトウェアを開発し、コンピューターの能力を最大限に駆使した 研究も進めています。
CREST
当研究協会を中心とした研究課題が、
戦略的創造研究推進事業-CREST に採択されました。
研究領域: マルチスケール・マルチフィジックス現象の統合シミュレーション
研究課題: 超精密予測と巨大分子設計を実現する革新的量子化学と計算科学基盤技術の構築
研究代表者: 中辻 博
化学・生物学・物性物理学など物質科学の世界は、
シュレーディンガー方程式などの量子的科学原理によって支配されています。
代表者は80年来不可能とされてきたこの方程式の正確な解法を発見しました。
本課題では、この方法をさらに発展させ、物質科学の現象を正しく予測、
解明する革新的量子化学と計算科学技術を構築します。
又、SAC/SAC-CI法を拡張し、
巨大系の光・分子設計を可能にする汎用性の高い基盤技術を確立します。
平成20年度研究実施報告書 (pdf)
