(Last update: Apr. 14, 2009)

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Curriculum Vitae



名前 中嶋 浩之 (Hiroyuki Nakashima)
生まれ 1979年, 愛知県小牧市, 日本
e-mail hiroqcri.or.jp
星座 水瓶座
血液型 A型を自負
趣味 猫遊び、スキー、ビリヤード、水泳、旅行、山登り、温泉に浸かること、おいしいものを食べること
座右の銘 「幸せは猫ろんで待ちましょう」、「理想は高く目標は低く」
好きな言葉 exact (形: 正確な、きっちりとした、厳正な)
嫌いな言葉 exact (動: (努力、服従などを)強要する)、泥縄
資格・検定 ソフトウェア開発技術者(情報技術者試験)、血液型検定(活用学,行動学)、猫との暮らし方検定、英検4級(中学生以来)、そろばん2級(小学生以来)




1997 愛知県立小牧南高等学校卒業
京都大学工学部工業化学科入学
2001 京都大学工学部工業化学科卒業
2003 京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻修士課程修了
2006 京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻博士後期課程修了
学位: 京都大学博士 (工学)
2006 京都大学大学院工学研究科 - 博士研究員
2007 - now 量子化学研究協会研究所 (量化研) - 第四部門 部門長




(last update: Apr. 1, 2009)
14 Free complement method for solving the Schrödinger equation: how accurately can we solve the Schrödinger equation,
H. Nakatsuji and H. Nakashima,
Progress in Theoretical Chemistry and Physics dedicated to the proceedings of the 13th International Workshop on Qunatum Systems in Chemistry and Physics (QSCP-XIII), "Advances in the Theory of Atomic and Molecular Systems" 47-60 (2009).
13 How does the free complement wave function become accurate and finally exact starting from the Slater and Gaussian initial functions for hydrogen atom?,
H. Nakatsuji and H. Nakashima,
Int. J. Quantum Chem. 109, 2248-2262 (2009).
12 Solving non-Born Oppenheimer Schrödinger equation for hydrogen molecular ion and its isotopomers using the free complement method,
Y. Hijikata, H. Nakashima, and H. Nakatsuji,
J. Chem. Phys. 130, 024102-1-11 (2009).
11 How accurately does the free complement wave function of a helium atom satisfy the Schrödinger equation?,
H. Nakashima and H. Nakatsuji,
Phys. Rev. Lett. 101, 240406-1-4 (2008).
10 Solving the Schrödinger equation of helium and its isoelectronic ions with the exponential integral (Ei) function in the free iterative complement interaction method,
Y. I. Kurokawa, H. Nakashima, and H. Nakatsuji,
Phys. Chem. Chem. Phys. 10, 4486-4494 (2008).
9 Solving the electron and electron-nuclear Schrödinger equations for the excited states of helium atom with the free iterative-complement-interaction method,
H. Nakashima, Y. Hijikata, and H. Nakatsuji,
J. Chem. Phys. 128, 154108-1-10 (2008).
8 Solving the electron-nuclear Schrödinger equation of helium atom and its isoelectronic ions with the free iterative-complement-interaction method,
H. Nakashima and H. Nakatsuji,
J. Chem. Phys. 128, 154107-1-7 (2008).
7 Solving the Schrödinger and Dirac equations of hydrogen molecular ion accurately by the free iterative complement interaction method,
A. Ishikawa, H. Nakashima, and H. Nakatsuji,
J. Chem. Phys. 128, 124103-1-12 (2008).
6 Solving the Schrödinger equation of atoms and molecules without analytical integration based on the free iterative-complement-interaction wave function,
H. Nakatsuji, H. Nakashima, Y. Kurokawa, and A. Ishikawa,
Phys. Rev. Lett. 99, 240402-1-4 (2007).
5 Solving the Schrödinger equation for helium atom and its isoelectronic ions with the free iterative complement interaction (ICI) method,
H. Nakashima and H. Nakatsuji,
J. Chem. Phys. 127, 224104-1-14 (2007).
4 On the O2 binding of Fe-porphyrin, Fe-porphycene, and Fe-corrphycene complexes,
H. Nakashima, J. Hasegawa, and H. Nakatsuji,
J. Comput. Chem. 27, 1363-1372 (2006).
3 On the reversible O2 binding of Fe-porphyrin complex,
H. Nakashima, J. Hasegawa, and H. Nakatsuji,
J. Comput. Chem. 27, 426-433 (2006).
2 Free iterative-complement-interaction calculations of the hydrogen molecule,
Y. Kurokawa, H. Nakashima, and H. Nakatsuji,
Phys. Rev. A 72, 062502-1-11 (2005).
1 Analytically solving the relativistic Dirac-Coulomb equation for atoms and molecules,
H. Nakatsuji and H. Nakashima,
Phys. Rev. Lett. 95, 050407-1-4 (2005).




(last update: Jan. 8, 2010)
4 Recent progress in accurately solving the Schrödinger equations of general atoms and molecules,
Asian International Symposium - Theoretical and Computational Chemistry,
Osaka, Japan,
Mar. 28 2010 (Invited talk).
3 Recent progress in accurately solving the Schrödinger equations of general atoms and molecules,
Of Molecules and Materials (A Survey of Recent Concepts),
Kolkata, India,
Dec. 28-29 2009 (Invited talk).
2 Recent development in accurately solving the Schrödinger equations of general atoms and molecules,
The 13th Asian Chemical Congress (13th ACC),
Shanghai, China,
Sep. 14-16 2009 (Invited talk).
1 Toward accurate and predictive quantum chemistry - Solving the Schrödinger equations of a few electron atoms and molecules,
QCRI JST-CREST Symposium,
Kyoto, Japan,
May 31 2008 (Invited talk, in Japanese).


Research Interests
量子化学の究極の目標

 化学・生物・固体物理学といった物質量子科学における物理現象は、量子力学の基礎方程式であるシュレーディンガー方程式によって支配されています。20世紀の物理学の大革命たる「量子力学」、「相対性理論」の産みの親の一人であるPaul Diracは、1929年、彼の非常に有名な論文の中で、
   「物理学の大部分と化学全体の基礎的物理法則は完全に分かった。」
と述べています。つまり、この基礎方程式を解きさせすれば物質量子科学におけあらゆる物理現象の予言が理論的に可能だとしている。しかし、Diracは先の言葉に続き、
   「しかし、これらの物理法則を適用すると解ける望みのない方程式に行き着いてしまう。」
という悲観的な言葉を残しています。この物理基礎法則を構築した一人である張本人のDirac自身がシュレーディンガー方程式は解けないと言っているのだ。実際、原子・分子系において、水素原子に次いでシンプルな原子、ヘリウム原子ですら閉じた解は存在せず、すでに方程式を正確に解くことができません。
 量子化学という学問はなんとかしてこのシュレーディンガー方程式の解を求め、理論的に化学現象の解明と予言をしましょうという学問です。現在の量子化学理論の最も主流となっている方法は分子軌道法を基礎としたやり方です。この方法の行くつく先の極限理論はFull-CI法と呼ばれます。しかし、このFull-CI法は天文学的な数の変数の数を最適化する必要があり、しかもその解が求まったところで、有限の基底関数空間を用いる以上、正確な解とはほど遠い解しか得ることができません。
 これでは全然だめだ。現在の量子化学は80年前のDiracの亡霊に未だ支配されていると言わざるをえません。そのため、現在の量子化学は、「理解のための学問」、「近似理論」という見方をされていると言われても否定できません。私達の究極の目標は、このDiracの悲観的な言葉に対抗し、
   ・ シュレーディンガー方程式を超精密に解いてしまおう。
   ・ 量子化学を真に予言的な学問にしよう。
というものです。近年、中辻を中心に正確な波動関数の構造論が展開され、
Iterative Complement Interaction法(ICI法)と呼ばれるシュレーディンガー方程式を正確に解く一般的解法が提案されました。この理論はシュレーディンガー方程式の正確な解への収束が保証され、原理的にはシュレーディンガー方程式を超精密に解く指針が確立されつつあります。私達は、能率的・実用的な方法論の展開を進め、真に「正確な予言学としての量子化学の確立」に向けて邁進しています。

世界記録更新!!世界一精密な解を求めよう!
まるで、円周率の計算のように

 まずは、シュレーディンガー方程式が解けないと言われている最も簡単でかつ最も基礎的な系である2電子系のヘリウム原子に適用してみました。我々は、現段階で、エネルギー値として43桁に至る精度まで正しく解が求められました。現在の"state-of-the-art"の量子化学理論(Full-CI法)を用いた場合は、わずか3, 4桁しか正しく求まらないことを考えると、我々の手法が如何に精密であるか理解できます。反面、現在の量子化学理論が如何に近似的であるかということも。
 このように、まるで円周率の計算のように、いくらでも高精度の領域まで正確に解が求められることが数値的にも確かめられました)。我々が求めたヘリウム原子の43桁という記録は、現段階でPublishされている文献の中では世界記録です。つまり、
世界で最も精密な値です。
 我々の方法はなにもHe原子に限ったことではなく、一般的な方法論に基づいています。 ですから、理論上どんな原子・分子にも適用可能!現在はさらに様々な系に本理論の応用が進み、超精密な、まさに
Essentially Exactの結果を得ることに成功しています。

相対論的ディラック-クーロン方程式の解法

 これまで述べてきたように、化学はまさに電子の動きの学問、従って量子力学の運動方程式であるシュレーディンガー方程式を解けばそれだけで十分なのでしょうか?いいえ。軽い元素しか含まない原子・分子系の物理現象はシュレーディンガー方程式により支配されていると言えますが、重い元素を含む系ではその最も内殻の電子は光のスピードに近い速度(運動量)を持つため、相対性理論を考慮に入れる必要があり、この相対論効果が重要となってきます。つまり、相対論に基づく量子力学、相対論的量子力学の運動方程式を解く必要があります。
 原子・分子系で最も有用であることが分かっている相対論的な方程式は
ディラック-クーロン方程式です。しかし、このディラック-クーロン方程式は非常にProblematicな方程式です。ディラック-クーロン方程式は電子の解のみならず陽電子の解(負エネルギー解)が存在し、変分崩壊の問題が生じるため解法が非常に難しいとされています。実際、これまでの相対論的量子化学はこれらの問題のために、なかなか精密な解を得ることができない状態が続いています。
 しかし、我々の手法であるICI法は、シュレーディンガー方程式のみならずディラック-クーロン方程式に対しても非常に有用であることが分かりました。我々の波動関数は系のハミルトニアン自身を含み、ハミルトニアン自身が系の関数空間を構築していくため、ディラック-クーロン方程式の波動関数の大成分と小成分(電子、陽電子解に対応)の間の関係式を正しく満足させることができます。これを
ICI balanceと呼びます。これは、ディラック-クーロン方程式の正しい解を求める際に最も重要なことで、ICI波動関数はそのbalancingを自動的に満たすという素晴らしい性質があることが分かりました。さらに、我々は安定に解を求めるために、逆世界のハミルトニアン(逆ハミルトニアン)の手法を用いています。この方法も、変分崩壊の問題を防ぎ、正しい変分解を得るためにとても重要であることもわかりました。ICI法は、シュレーディンガー方程式でも相対論的ディラック-クーロン方程式でもどちらにも適用可能であるばかりか、ディラック-クーロン方程式の解法には大きなメリットもあるのです。

さまざまなPhysicsへの展開
中性子級の超強磁場下の水素原子の計算 - 100桁の精度

 本理論
は、原子・分子系のシュレーディンガー方程式のみへの応用にとどまらず、上記に述べた相対論的ディラック-クーロン方程式に加え、一般にハミルトニアンがよく定義される系に対してはすべて応用可能です。つまり、極めて一般性が高い理論であるとも言えます。これは、我々の手法がハミルトニアン自身の汎関数として展開されるという性質がそれを可能にしているのです。
 その結果、さまざまな物理効果の近似誤差を含まない議論が可能で、実験との高精度までの直接比較が可能になりました。
   ・ Non Born Oppenheimer計算(核の運動の量子効果)
   ・ 励起状態への展開
   ・ 特殊な系: 超強磁場下の原子・分子系
   ・ 相対論・量子電磁力学(QED)効果

これらの応用分野は化学に留まらず、天体物理学、固体物理学(量子ドット)、カオスなど、様々な科学分野への応用も可能にしています。また、様々な物理効果を検討することで実験値との完全な直接比較が可能で、実験よりも正確な理論計算を実現し、実験誤差をも議論することができるようになります。

一般的な多電子原子・分子系の計算: 積分lessな方法
ポテンシャルカーブ

 変分原理を基にするFree ICI法を一般的な多電子・原子分子系に適用する際、大きな問題に遭遇します。それは積分計算がどのような多電子関数においてもいつでも可能ではないという問題で、これをIntegration difficultyと呼びます。この問題を克服するために提案されたものが、積分計算を一切伴わないFree ICI LSE (Local Schrödinger Equation) 法です。LSE法は非常に簡単なアイディアを基にした手法ですが、この方法を用いることのできる波動関数はまさにEssentially Exactである必要があります。つまり、実質上正確と言えるべくFree ICI波動関数を用いるときのみ意味をなす手法です。
 この手法の導入により、積分計算が困難であった一般的な多電子原子・分子系すべてへの展開が理論上可能となり、残った問題は効率の良い計算アルゴリズムの開拓に絞られました。これまで、5電子系までの少数電子の原子・分子系に適用された結果ではすべて絶対エネルギーで10-5 a.u.まで正しい結果が得られており、化学精度(10-3 a.u.)は十分に達成しています。これはFull-CI計算を遥かに凌駕する結果です。全く積分計算を伴わずここまでの結果が出ることはある意味驚くべきことであり、Free ICI波動関数のExactnessが非常に良い所以です。 さらに、化学反応の研究には欠かせないポテンシャルカーブの計算も行いました。結合状態から解離状態に至るまで非常に高精度の解が得られ、やはりFull-CI計算やMulti-Reference Coupled Clusterの計算よりも遥かに良い結果が得られました。

生命現象に潜む量子力学原理の追求

 生命現象は生体内での様々な化学反応や物理現象から成り立っています。このような生命現象を司る様々な機能のうち、地球上に生物が誕生してからこれまで長い長い歴史を経て現在まで受け継がれている最も基礎的で重要な機能ほど、決してタンパクの揺らぎや統計で片付けられるものではなく、確固たる普遍的な量子力学原理がその根底に潜んでいると考えられます。このような普遍的な原理の追求こそが我々の大きなテーマであります。

生物とスピン
酸素吸着・脱離のポテンシャル面

 我々にとって欠くことのできない最も重要な生命現象の一つに"呼吸"があります。生命を営むためには常にエネルギーを生み出す必要があり、そのためには燃料を燃やすための何らかの触媒が必要です。当初の生物は嫌気的で酸素を用いず、硫黄など別の物質を"呼吸"に使っていました。水中の植物が光合成を始め、酸素を生み出し始めると地球上の大気は酸素で覆われました。
 酸素分子はスピン状態が三重項。それは、酸素分子が極めて活性が高く高エネルギーであるにも関わらず、空気中に安定に存在できている所以です。このような高エネルギーの酸素分子を使わない手はなく、次第に酸素を呼吸に用いる好気的生物が出現し、その酸素の高いエネルギー活性を有効に取り入れて活用することができるようになりました。しかし、通常の一重項の物質とはなかなか結びつかない三重項酸素をマイルドな環境の生体内で取り入れることはそれほど容易ではありません。我々哺乳類の酸素の捕獲・運搬、そして放出を担うタンパク質が赤血球中に存在するヘモグロビンです。酸素を肺で取り込むだけではなく、再び細胞中で放出するという制御メカニズムが必要です。
 我々は、このヘモグロビンの活性中心であるヘムの酸素の捕獲・放出のメカニズムを研究しました。反応座標を2つ選び、2次元ポテンシャル面を計算したところ、酸素の吸着と脱離のエネルギーカーブとヘムの構造・スピン状態が密接に関わっていることを突き止めました。酸素の解離状態は高スピン状態ですが、遷移状態で低スピン状態のポテンシャル面と交わります。そこで系間交差が起こりスピン状態が低スピン状態に変化します。低スピン状態のポテンシャル面は全体的に吸着的で酸素は結合状態に至ります。しかも、このような系間交差はヘムの構造(特に鉄原子の位置)が変化しないと起こりません。このように、我々哺乳類はヘムの構造とスピン状態の柔軟な制御により、酸素分子の捕獲と放出を可能にしているのです。
 スピン状態の変化を起こすためには、相対論的なスピン軌道相互作用の摂動が必要です。つまり、我々は一呼吸ごとに相対論を使っており、しかもそのスピン状態の制御機構が人の呼吸メカニズムにおいて極めて重要であることを突き止めました。もし、この世に相対論がなく、スピン軌道相互作用による摂動がなければ呼吸ができなかったのです。こんなに身近に生命の根幹を成す重要なところに相対論に由来する効果が潜んでいたのです。このように、(少し大げさに言えば)"呼吸"を成し遂げるための最も普遍的な原理は実に"スピン"であると言えます。これはまさに生命現象に潜む普遍的な量子的かつ相対論的な根底原理です。

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